日本皮膚科学会は、1900年に創立された皮膚科に関しての学会であり、各種皮膚疾患に関する診療ガイドラインの作成等、科学的な根拠に基づいた情報の提供や標準的治療方法の促進等、公共の利益となる多様な取り組みを行っている公益社団法人です。2010年には、AGAとも呼ばれている男性型脱毛症の診療ガイドラインを作成しており、皮膚悪性腫瘍診療ガイドラインにおいて採用した推奨度の分類基準とエビデンス根拠のレベル分類により、ミノキシジル外用、塩化カルプロニウム外用、t-フラバノン外用、アデノシン外用、サイトプリン・ペンタデカン外用、フィナステリド内服、植毛等の治療法について、A、B、C1、C2、Dの5段階で評価しています。
ミノキシジル外用は、約150例を対象とした12週間の3件のランダム化比較試験と、それに引き継いで行われた24ヶ月の前後比較試験により、有意に発毛を促進させた上に副作用が生じなかったという良質な根拠が確認されて事で、AGA治療の外用療法における第一選択薬として強くおすすめできるという事で推奨度Aとされています。
塩化カルプロニウム外用は、1件の左右比較試験と2件の前後比較試験により、ある程度の発毛促進効果と脱毛抑制効果とが示されていますが、対象症例数が少ない上に統計的な検討が不可能という事から有益性が現段階では十分に実証されていないという事で、外用療法の一つとして行う事を考慮しても良いという意味の推奨度C1とされてます。
t-フラバノン外用、アデノシン外用、サイトプリン・ペンタデカン外用等の市販されている育毛剤に配合されている成分も同様に推奨度はC1であり、良好な結果が出ている一方で有効性を示すためのデータ症例が少ないという事からミノキシジル外用よりも低い評価につながっています。
ミノキシジル外用と同様に推奨度Aという高い評価を得たのが、フィナステリド内服です。国内で行われた臨床試験により、頭頂部の写真評価において58パーセントが軽度以上の改善、98パーセントが不変以上の効果が確認されており、勃起機能不全や写生障害等の副作用もプラセボと有意な差は認められていないので、内服療法の第一選択薬として強く推奨されています。
ただし、フィナステリドは、海外の良質なランダム化比較試験により、更年期以降の女性に生じた男性型脱毛症に対しては無効である事が確認されており、さらに妊婦に投与した場合は男子の生殖器の正常発育に悪影響を及ぼす恐れもあるので、妊婦、妊娠している可能性がある女性、授乳中の女性に対しての投与は禁止であり、女性全般についての推奨度は行わない様に勧めるという意味のDとされています。
植毛の場合は、自身の毛根組織を薄毛部分に移植する自毛植毛に関しては推奨度B、化学繊維等で作られた人口毛を移植する方法については推奨度Dとされています。推奨度Bとは、行うよう勧められるという意味で、フィナステリド内服等により十分な改善が得られない症例に対しては、十分な経験と技術を有する医師による施術は推奨されています。
この様に、日本皮膚科学会による男性型脱毛症診療ガイドラインでは、様々な治療についての詳細なデータが公表されており、実際の治療を受けるにあたって非常に貴重な参考資料として利用できます。正しい知識に基づいて適切な治療を行う事により、健康状態をキープしたままで薄毛の改善や症状の進行の防止を期待する事が出来ます。逆に、推奨度Dという評価を得ている治療法は、効果が期待できないだけではなく副作用に見舞われる危険があります。これらを選択しない様にするという事も、薄毛治療を行う上で重要なポイントとなります。
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